中土佐町議会議員政治倫理条例改正条例案(H26.10月)

反対です。
まず、この条例ですが、条例の名称は、「中土佐町議会議員政治倫理条例」となっています。この条例の制定目的は議員の倫理に関するものですが、そこに町長及び執行部の政治倫理を当て嵌めるということには、立法趣旨から無理があります。目的を混濁させているからです。主語述語の関係がおかしくなり、条例名称から変更すべきで、これを制定すると、大変失礼ですが、中土佐町議会の法律文章に対する能力が疑われ、専門家の失笑を招きかねません。
改正を考えるなら、条例名を、「中土佐町政治倫理基本条例」とでもして、政治の基本条項を定める新たな条例にすべきです。
地方公共団体を代表する町と議会の関係は、それぞれ住民が選挙する二元論となっており、執行機関の長としては、法令、予算に基づく事務の管理や執行を行う義務を負うものであり、長と議会との関係は議会の不信任決議が法的処理であります。基本的にはそれぞれが住民に責任を持つもので、町長の行為に関し、議会が縛りをかけるのは、当事者にしてみれば、地方自治法に定める権限が制限される、極端に言えば不遜行為とも受け取られ兼ねないものであります。
第2条に追加ですが、第2条は見出しに(議員及び町民の責務)とあり、議員と町民の関係について定めたものです。そこに町長及び執行部の条項が挿入されると、町長及び執行部と町民との関係の文言が必要ですし、見出しの変更も行わなければなりませんが、不備であり、再度、条例改正の手続きが必要です。
次に改正箇所の今回の改正案の文言にある、「不正な働きかけ」の不正の概念が意味不明であるからです。一見もっともらしい表現にはなってはいますが、では「不正」とは何か、です。
人に縛りをかける法令は、極力、厳格にすべきというのが近代法の法理です。日本国憲法も、自由を最大限尊重しています。それだけ民主主義社会は、人の行為をポジティブリスト以外は、その行動を認めています。つまり、禁止事項以外は何をしても個人の自由の領域ですが、禁止事項は厳密に規定されているのです。
私は、この改正案を見て、すぐに治安維持法を思いました。大正14年に制定された治安維持法は、普通選挙法と併せ制定されたもので、当時としては、武力革命を歌ったソ連邦の共産主義思想を取り締まる目的で成立したもので、当時としては良い法律でしたが、そのうち拡大解釈されて、ご存じの天下の悪法との烙印を押されています。因みに現代でも、武力による政権奪取は禁止事項で、日本国憲法はそれを認めていないことはご承知のところです。
この改正案が、それと同一というわけではないですが、一見いいことなのに、裏に潜む何かを感じるのです。
「不正」の捉え方は、主観的なものです。「働きかけ」に根回しがあります。根回しは、説明、説得で政治的に必要な要件で、アメリカではロビー活動とされていますが、「談合」ということでもあり、状況によっては無理やり同意させられたという主張も成り得るものです。人によって捉え方が異なるもので、情緒的なものです。立場や状況によって様々であり、どうとでも解釈できるものです。拡大解釈され、政敵を追い落とす政争の具ともなり兼ねない要因を秘めているのです。
要は法律用語としてはあいまいな言葉であり、法としては危険な、こういう文言はいかがかと思うもので反対です。
そうした疑義のあるものをなぜ今行おうとするのか、わざわざとしか言いようのないものであり、急がず慌てず、じっくりと腰を落ち着けて取り組むことを提案するものであり、明確に、何が不正に当たるのかを定義し、条例とすべきです。
再度、然るべき委員会に諮り、慎重に審議すべきであります。

 

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プロフィール

佐竹敏彦(さたけとしひこ)

田舎の宝を取り戻す!

昭和26年7月11日生まれ、上ノ加江小中学校、須崎高等学校、高知大学卒業。高知市役所に35年勤務。

高知市社会福祉協議会の職員としての経験やノウハウを活かし生まれ故郷中土佐町の発展を目指す。

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